DMAT看護師のヨッシーのブログ

ER看護師でDMAT隊員副隊長を務めているヨッシーのブログです。DMATに関する情報、日々のDMATの業務、看護の技術について等、DMAT看護師に興味を持っている方に役立つ情報を発信していきます。

ただ挟まれていただけなのに【クラッシュ症候群にならないために】

      2016/05/12

阪神淡路大震災で倒壊した建物や倒れた家具などに体の一部が挟まれてしまい後に救出された際状態が急変して死亡するということが多発してしまいました。

救助している救助後も意識もしっかりしていたのになぜ?という状態がありました。これがクラッシュ症候群です。

このクラッシュ症候群は第二次世界大戦においてドイツ軍がイギリスのロンドンを爆撃した際にやはり同じように倒壊した建物に人が挟まれてしまい救出後に同じようになくなってしまうという事態が多発してしまいました。爆撃だけではなく炭鉱の崩落事故や地震でも見られるようになりました。

日本でもその後認識はしている病態ではありましたがそれほど発生していなかったので認知度は高くありませんでした。

ところが阪神淡路大震災においてこのクラッシュ症候群を呈する傷病者が多く発生してしまいました。

いざ症例を目の前にしても例えば下半身を挟まれて救出し下半身が麻痺した症状があったので脊損ということで判断されてしまい経過観察扱いされてしまいました。

その後急変し急いで被災地内の病院に搬送され検査した結果高カリウム血症と急性腎不全で死亡したという症例がありました。クラッシュ症候群が牙を向いた瞬間だったのです。

以前にもブログでもご紹介させていただきましたが今回熊本の震災でも多くの建物の倒壊が見られました。死亡原因がまだ震災関連死や建物の下敷きになってしまった窒息死といったことは耳にしましたがこのクラッシュ症候群での死亡例はまだ聞いていませんが改めて詳しく皆さんに知っていただきたいと思います。

どのような病態なのか

骨格筋すなわち筋肉が長い時間挟まれてしまいまたは圧迫された状態が続くと筋肉ないが虚血した状態になります。その圧迫が解除され再灌流が始まると虚血になった細胞膜のナトリウムとカリウムのポンプが障害され細胞内にナトリウムと水が移動し細胞外にカリウムが流出してしまいます。水が移動することによって血管内は低容量となりショック状態となるのです。

さらに再灌流したことによってカリウムが全身を駆け巡り高カリウム血症となり致死性不整脈が起こり死亡するという事態が発生してしまうのです。

そしてカリウムだけではなくミオグロビンという有害物質も流れ出してしまいます。このミオグロビンが腎血管の収縮や尿細管への直接の毒性の影響で急性腎不全を発生させます。

挟まれていた筋組織が腫脹をしていた場合コンパーメント症候群を合併することがあり虚血性再灌流播種性血管内凝固症候群(DIC)急性呼吸促迫症候群(ARDS)多臓器不全(MOF)の引き金となるのです。

クラッシュ症候群の診断とは

次にクラッシュ症候群の診断方法ですが重量物に挟まれていたというエピソードがあれば真っ先に疑わなければいけません。挟まれていた体の部位の運動麻痺や知覚麻痺それと排尿時に見られる独特の色のポートワイン尿という黒から赤い尿が出てしまいます。

挟まれていた時間ですが教科書によっては四時間以上とありますが私がDMATの養成講習で受けた講義の中で三十分でもなってしまうということを習いました。

現場において比較的元気でバイタルサインも安定しています。ただ体の一部が挟まれていただけというだけで救助者も油断してしまいます。

ところが急激に症状が変わってしまいsumiling deth(笑顔の死)とい割れるようになってしまいました。皮膚の所見としては時間が長ければ長いほど壊死を起こしていたり水疱形成を伴ってくることもあります。紅斑も見られます。

挟まれていたところは知覚麻痺や運動麻痺があるので脊損ということで治療や搬送を後回しとなってしまうんですね。その場合は肛門反射の有無を見て鑑別できることを覚えておいてください。ポートワイン尿に関しては必要ならどう尿もためらってはならないと言われています。

ちなみにボディービルダーの男性が挟まれていたとします。体脂肪率がとても低く筋肉質です。この筋肉質の方がクラッシュされているとクラッシュ症候群を発症すると重症化しやすいと言われているので要注意です。そこまで筋肉質でなくても女性より男性の方が筋肉質となるので要注意です。

現場での治療

何かの重量物に挟まれている人を救助しようとするときに救助活動と同時に医療的な処置を平行に行うことが予後を決定するキーポイントとなるのです。

救出活動中に点滴をします。生理食塩水液やカリウムを含まない点滴を行います。この仕事はもちろん救助隊ではできません。私たちDMATが行います。この点滴の意味は循環血流量の減少によるショックと酸性尿の発生を抑える働きをしたり利尿させたり尿がアルカリ性になってしまうと急性腎不全になるのを防いでくれるのです。

この初期の治療がクラッシュ症候群を防いでくれたり救助された方の生命予後を良好にして尊い命を救うことができるのです。救出後ももちろん油断してはいけません。キチンとした治療ができるまで心拍をモニターしたり万一において致死性の不整脈が発生したら対処できるように除細動器を準備したりする必要があるのです。

もし挟まれている人がいたら真っ先にこれらのことを思い出してくださいね。







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